縦書きと横書き 変化の歴史

縦書きと横書き 変化の歴史

 現代日本においては、縦書き横書き両方が用いられる。全体的な割合としては、古来縦書きが主流だったことの名残から縦書きが多い。

 縦書き(縦組み)は、日本語本来の記法である伝統と自負と共に、書道作品のほとんど、国語の教科書、文芸(小説、詩歌、戯曲など)、新聞などで用いられる。社会科学系の書物も、数理経済学、会計学の専門書を除くと、自然科学関連の書籍でも数式などを用いない啓蒙書では縦書きが依然として多い。

 横書き(横組み)は、外国語、数学、科学、音楽になどに関する専門書。つまり、横書きの言語、数式、楽譜を含むような文書のほとんどで使われる。映画・ゲーム情報誌なども、横長の画面写真を扱うレイアウトの性質上、横書きが主流。コンピュータの出力もほとんど横書きである。教科書では、国語に属する分野以外はほぼ横書きが用いられる。社会科が縦書きだった時期も昭和60年代まであったが、その後は横書きへと変わった。

 元来、日本語は漢文にならい、文字を上から下へ、行を右から左へと進めて表記している。また漢字と仮名の筆順も縦書きを前提とし、横書き不能な書体すらも存在する。一方、横書きとは文章を横方向に進めるもの。

 横書きには左横書き(左から右へ文字を進める方法)と右横書き(右から左に文字を進める方法)がある。ただし、寺社の門や道場などで見られる扁額(へんがく)は一見すると右横書きに見える記法が行われてきたが、これらは「1行1文字の縦書き」。つまり、縦書きの規範で書かれたものである。

 日本においては江戸時代に蘭学の流行などの影響を受け、洋書を真似た横書き法が発生。1788年に大槻玄沢が刊行した『蘭学階梯』が初めて幕府公認のもとオランダ語の文字(ラテン文字)を紹介したことを機に、民衆の間に横書き文字の存在が広まった。次に横書きが用いられたのは外国語の辞書。しかし、最初の日本語の外国語辞書は、外国語が左横書き、日本語が縦書きで、本を回転しないと読めなかった。

 太平洋戦争前、一般大衆を主な対象とする新聞や広告などでは、1行1文字の縦書きを横読みさせる記法が優勢であった。しかし、1940年頃から左横書きへの動きが見られるようになり、国語審議会で左横書きを本則とする旨の答申を出すに至った。ただ反対論も強く、答申の同部分は閣議提案されなかった。

 戦後、GHQ/SCAPによるローマ字採用勧告や漢字の廃止運動などの社会運動が活発化。西欧の記法にならう左横書きが革新的、「1行1文字の縦書き」は保守的というイメージが決定的なものとなり、「1行1文字の縦書き」は衰退し始めた。

 しかし、今でも自動車など前後の概念を持つ対象に文字を書く場合、走行中の読み取りを考慮した結果、右側面に右横書きが用いられることがある。さらに、右横書きが隆盛であった時期は特定できるため、映画や漫画などで時代を指し示す懐古調演出として旧い字体・かなづかいと共に右横書きが用いられる。

 また、蕎麦屋の「蕎麦処」「生蕎麦」等の暖簾文字などに見られるように、「老舗」「伝統」「格式」を演出したいがための右横書きも健在。ただし、これは先述の通り、扁額などの流れを汲んだ古来よりの「1行1文字の縦書き」に属するものである。

 時代によって変わってきた書き方がこの先どのように変化するのか、非常に興味深い。

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